チャンピオンの翼 3月に行われたパラグライディング世界選手権で優勝に輝いたのは、ブルースゴールドスミス。ブルースは、エアーウェーブの設計者でもあり競技者でもある。世界チャンピオンおめでとう! ブルースおめでとう! さてエアーウエーブのインフォメーションによると、このマスタング2は、競技用のfrシリーズから直接技術投入しているという。その動きは軽いがダイナミックで機敏な動きをするという。試乗が楽しみだ。
エアーウエーブは、初級機から世界選用のパラグライダーまで充実したラインナップを用意している。マスタング2は、この中でパフォーマンス・インターメディエイトからハイパフォーマンスに位置する。解りやすく言えば、「中上級高性能」という位置付けだ。
ブルースの目指すところ 2年前、ブルースが来日したときに一番印象に残っている話は、「3倍理論」。これはどういう意味かというと、スピードレンジのこと。ジャンボジェットは、300〜1000km/hで飛ぶ。ハングも30〜90km/h。ところがどうだろう。パラグライダーのスピードレンジは3倍無いのだ。ブルースは、インタビューでこのことをしきりに言っていた。失速速度20km/hで、最高速度60km/hのパラグライダーを作りたいと…。低速が効くパラグライダー。これが可能になれば、ランディングも楽になる。ソアリングも楽になる。それによって、パラグライダーの安全性は格段にあがるというのだ。高性能と安全性を両立させることができるのだと。 さて、マスタング2は、果たしてブルースの目指すグライダーになっているかスペックを見てみると…。マスタング1から2のバージョンアップで、失速速度を23km/hから20km/hまで下げることに成功している。最高速度は、55km/hとなっているので、あと2km/h失速速度が落ちれば3倍が達成できるということになる。さっそく試乗してみよう。
ライズアップ&テイクオフ ライズアップは、軽快だ。あまり焦らずゆっくりと引けばエアーインテークからスムーズに空気が入る。初級機と較べればエアーインテークは小さめで一部閉じている構造なので、ライズアップの初動には気をつかおう。立ち上がりは速い。ブレークの反応も機敏だ。頭上に上がったらしっかりブレークコードで走るのをおさえよう。ライズアップの操作で、ムスタング2の性格が少し見えてくる。翼を走らせてやれば、揚力がグングンと働き体を支えてくれる。 アスペクトはコンペ機ほど無いので、左右のバランスに神経質になる必要はない。しかし翼型やリーディングエッジ回りの作りはとても綺麗に出来ているので、動きはとてもシャープだ。ライズアップ、テイクオフともにゆっくりタイプではないので、的確でスムーズなハンドリングが要求される。
ストレスの無い操作系 初フライトしてみて、う〜むやっぱりエアーウェーブだな。と唸らせるものがある。ブレークコードのプレッシャーや旋回時の空気を掴む感じが毎度のことながら、柔らかく粘りを感じる。この感触をパイロットがどの様に受け止めるか? それはまちまちだが、翼を通過する空気の状態をブレークコードに敏感にしかし優しく感じることができるのではないだろうか。旋回の時の内翼の引っ掛かり具合は、「ガチッと」掴む感じではなく、柔らかい。 左右のブレークコードを同時に引くと翼はピッチアップする。ゆっくり離すと翼は走り出し僕の頭上を通り越してピッチダウン、シュートに入る。動きは躊躇がなくストレート。徐々にピッチングを強くしていったが、翼の剛性は高く通常の動きではフロントコラップスには入らない。続いてローリングの動きをチェックする。この動きもスムーズだ。アスペクトもコンペ機ほど無いため、自然についてくるロールの動きに合わせて体重移動が完了する。翼端のラム圧も程良く、翼端が潰れるような挙動は一切ない。 ピッチ・ロール・ヨウどれもパイロットの指示通り動く。かといってオーバーコントロールを助長する動きはない。
スピードレンジ 今回試乗したマスタング2はMサイズ。僕のスターティングウエイトは97kgで、メーカーが指定するベスト体重にドンピシャだ。前述の「3倍理論」を確かめるために、失速速度とフルアクセルの速度を確認する。ブレークコードを徐々に引いていき、失速すれすれの速度を測ってみると、公表どおり20km/hを前後する。この時点ではまだ失速には入いらず、翼は粘りをみせている。次にアクセルを踏んでみる。表示は、52〜58km/hを示す。公表通り55km/h程には達している。リーディングエッジの剛性は高く、アクセルには余裕がある。(但しこれ以上引かれない構造になっている。) ブルースが言うように、スピードレンジが広くなれば、特にこのクラスのパラグライダーにとっては、恩恵が多い。良く飛び、コントロールが容易で、ランディングも簡単だとくれば、申し分ない。実際に試乗してみて、低速域の粘りがよいことは確認した。目標値の3倍はないけれど、ムスタングから較べると低速側に広くなり、3倍まで後-2km/hもう一息だ。そしてその意味は、ジワリジワリと効いてくるはずだ。実際の意見は多くのマスタングパイロット達の声に耳を傾けたい。
安全性 マスタング2は、S,M,L,XL共にDHV2を取得している。mサイズについてテスト結果を見てみると、1は少なく2の評価が多い。(DHVのテストは、17項目のテストを行い、一番悪い結果をグライダーの安全クラスとして認定する)潰れ系、ストール系は概ね2の評価だ。軽めでのテストでも重めでのテストでも同様の結果が得られている。実際にアクセルを踏んだ状態で片翼潰しを試みてみた。一回転せずに自然に通常滑空に戻った。クラス2の成績だ。DHVのテストの結果からも、決してゆっくりタイプのパラグライダーではない。スポーティーなグライダーだ。クラス2としての安全性は満たしている。実際に試乗してみて、トータルバランスが良いので安定感がある、安心感もある。しかし、パイロットの飛ばし方次第で無理も効くので、マージンはしっかりとって飛んでもらいたい。
現代のパラグライダー完成形 マスタング2に乗ってみた。完成度が一際高く感じた。2007年モデルのパラグライダーの中で、トータルバランスでトップクラスのパラグライダーという印象を持った。ハンドリング、性能面、安全面、細部まで手を抜かない構造、シャープでシワのないキャノピーなど、素晴らしくバランスがとれているのだ。つまり、大人のパラグライダー。トップ性能は、高性能の域に達し、それでいてDHV2クラスの安全性を備えている。育ち盛りのパイロットがもっと上のフライトをするために、ベテランパイロットが息の長いフライトを続けるために、選んで欲しい、玄人受けするパラグライダーだ。 | |