| 1クラス上のグライダーを1クラス下の価格帯で ゼログラビティーを輸入販売しているのは、埼玉県に拠点を置くエアリアル(Aerial)という会社である。スクールでの販売が原則となっているこのマーケットで、発売記念キャンペーンとして「1クラス上のグライダーを1クラス下の価格帯で。」というキャッチフレーズを掲げ、スクールへの販売と平行してインターネットでのダイレクト販売を一年前の4月から開始した。 メーカーのダイレクト販売は、この業界の禁じ手だ。その辺りを代表の下山氏にズバリ聞いてみた。 「私もスクール経営を長くやっております。グライダーの選択にはスクールインストラクターのアドバイスは大変重要です。購入するお客様の技量や性格、フライトエリアの風の状況等を総合的に勘案し最適なグライダーを選択する必要があるわけですから。注文や問い合わせがあったからとは言え、誰から構わず販売するということはしません。連絡をいただいてお話を伺ってから最適な販売方法、お客様にとって最適な購入方法を選択いただけるようにしています。場合によってはお客様の近隣スクールの紹介や新たに販売店になって頂きながら購入したいグライダーの選択肢の幅を広げていただいています。 ただ、お客様の声としてはメーカー系列のスクール、エリアの場合、そこの取り扱いグライダーしか購入できないという不満や批判があるのも事実です。このあたりが改善され、もっとオープンな環境ができると良いですね。」と話し通常のネット販売とは一線を画していることを強調した。 WEBを覗いてみると、確かに安い。他社のパラグライダーに較べると10万円程安い。今回試乗するリンクというグライダーは35万円。そこで気になるのは、販売価格とクオリティーだと思う。そのあたりを厳しくチェックしてみよう。 無重力(ZERO Gravity)という会社 ゼログラビティーの代表を務めるのは、チェ・マン・スーという韓国人だ。彼は2000年まではイーデル社に勤務していた。それまではジングライダーのジン・セク・ソンらとイーデル社で同じ釜の飯を食い、パラグライダーのデザイナーとして共に活躍していた。イーデル退社後、自らの夢とパラグライダーデザイナーとしてのこだわりをもって軍用パラシュートとレジャー用のパラグライダーのメーカーを立ち上げた。それがゼログラビティーを扱う「JMインターナショナル」という会社だ。私も韓国で一度会ったことがあるが、物静かなビジネスマンだ。ゼログラビティーには、チェ・マン・スーの他に2人のデザイナーとテストパイロットがいる。 2005年茨城県足尾で行われた日本選手権には、このゼログラビティーの競技モデル、バイパー(VIPER)を引っ提げて1人の韓国人パイロットがやってきた。とてもシャープな翼だった印象が強い。そして最終日、私は大会スタッフをやっていてゴールにいたのだが、この日ゴールに辿り着いたのは、バイパーを駆るこの韓国人だけだったのだ。 残念ならが、この日はキャンセルになってしまったが、成立していたら、あわや優勝をオープン参加の韓国人に持っていかれるところだったのだ。「なかなか良いグライダーを作っている。」ゼログラビティーには、そんな印象が強く残っている。 ライズアップ&テイクオフ リンクは、初中級グライダーとして2006年発売された。ENを取得する予定で、クラスB(DHV1-2クラス)を目指しているとのこと。さっそく試乗してみた。 キャノピーを開くと、クローズドエアーインテークが目に付く。このクラスとして、クローズドを採用しているのは珍しい。インテークの大きさは大きめで、比較的リーディングエッジに近い位置にある。空気の入りはとても良い。ライズアップの立ち上がりは、ゆっくりだ。男性が力任せで上げるのではなく、翼が上がってくるのをゆっくり待つゆとりが欲しい。初級機のチューニングがされているので翼は先走ることはない。頭上に上がったらブレークはあてずにニュートラルかバンザイで加速しよう。 クリーンな翼 空中でキャノピーを眺めてみる。とてもきれいな翼に惚れ惚れする。写真を見てもらって一目瞭然だ。クローズドエアーインテークが、シャープなリーディングエッジを象るだけでなく、キャノピーの内圧をコントロールして均整のとれたシェイプを作り出している。これは、Vリブやテープが惜しげもなく使われているので実現しているのだろう。ブレーク時のトレーディングエッジもシワが少なくきれいにフレアーが掛かる。なかなか見事な作りだ。一世代前のこのクラスのパラグライダーは、比較に対照ではない。話は戻るが、アスペクトは投影で3.6と小さく、全てにおいて安心感がある。 コントロール ライズアップがゆっくりで、テイクオフの加速も必要だったので、コントロールについてもあまり機敏ではないだろうと思っていた。ところが意外にもストレスを感じなかった。回したいところで回すことができる。サーマルソアリングもスムーズに上昇していく。マイルドな仕上がりになっている。アクセルを踏むとスムーズに加速する。この辺が最新のパラグライダーの素晴らしいところでもある。昔のグライダーだとアクセルを踏んでも沈下ばかりが増えて加速しない。Vリブや3D設計のお陰で、有害効力の少ないパラグライダーができるようになったからだろう。このクラスで50km/hでれば十分だ。 安全性 ゼログラビティーでは、ENを取得する準備を進めているという。DHVではなくENを取得しようとするあたりはグローバル化の波が韓国にも押し寄せているんだな、と関心する。基本的なテストを試みてみたが、ENでクラスB(DHV1-2)は取得できるだろう。アシメトリックコラップスからの回復も45度ほどの回復で直線飛行に戻った。また低アスペクト機で注意が必要な「スパイラルに入れると入りっぱなし」という問題もなく、自然回復する。低速の粘りは抜群で、失速特性も緩やかだ。 練習機を乗りこなしたら 選択肢に入るグライダー 今回のテーマは「販売価格とクオリティーの評価」だ。僕の評価は◎。縫製も満足のいくものだ。このグライダーが35万円なら買いだと思う。但し余計なことを書いちゃうけど、このクラスを選ぶのは、愛好者ではなくスクールのインストラクターだ。練習生はイントラにすすめられてマイグライダーを購入することになるからだ。 しかしパイロットにとってパラグライダーを選ぶのは嫁さんを見つけるようなもの。お見合いではなく、恋愛でゲットしても良い時代だと思うけどいかがだろうか。 エアリアル社には卸し価格を他社より下げる努力をしてもらって…。そうすれば全国のスクールもゼログラビティーが選択範囲にはいると思うのだが…。 |